日本の接客・おもてなしを、世界基準にアップデートする思考
更新日:7月22日

みなさん、こんにちは!株式会社グランジュテ・インスティテュートの今泉麻衣子です。
私は現在、現役のプライベートジェットCAとして、世界各国を飛び回りながら、企業研修や講演活動を通じて「世界基準のホスピタリティ」をお手伝いしています。 日本のおもてなしは、世界からみても本当に素晴らしいものです。
その丁寧さ、細部への気配り、相手を思いやる心……これは日本が誇るべき宝です。
しかし、世界各国のお客様と接してきた私が、今、正直に思うのは
「日本のサービスは丁寧なのに、どこか惜しい」
今日はその「惜しい」の正体を、現場で体験したエピソードとともにお伝えします。
「惜しい」と言われる瞬間
「マニュアル通りに動いている。笑顔もある。英語も話せる。言葉遣いも丁寧。それなのに、海外のお客さまからのリピートの声がなかなか届かない」
これらの原因は、スキルの不足ではなく、「価値観のズレ」です。
そもそも日本と海外では「最高のサービス」の定義が少し違います。
悲しいですが、そのズレに気づかないままだと、どれだけ丁寧に接客しても、相手の心には届かないことも。
具体的な事例を3つ見ていきましょう。
具体例①与えるホスピタリティの落とし穴
以前、ある高級ホテルに2泊したときのことです。
2日目の夜、部屋に戻ると、前日に1度しか使っていない歯ブラシやスポンジが、すべて新品に替えられていました。
そのホテルは木製のアメニティで「サステナビリティへの配慮をしています!」とアピールしていたのですが……実際はそのアメニティを、毎泊すべて取り替えていたのです。
私は思わず「これはラグジュアリーなのか?」と疑問を感じました。
実は、世界基準のラグジュアリーは、新しいものを提供することではありません。
「お客様に選択の自由があること」です。
たとえば、こんな一言があるだけで印象はまったく変わります。
「お使いのアメニティはそのままにしておきますか?ご希望でしたら新しいものもご用意できます」
お客様に選択の自由を渡すことで、「あなたを一人の人間として扱っていますよ」という敬意の表れになるんです。
「新品=良いサービス」という思いを少し手放すだけで、お客様との関係は大きく変わります!
具体例②清潔感は印象ではなく、信頼
もうひとつ、忘れられない体験があります。
あるホテルで、一生懸命に対応してくれたスタッフの方がいました。 言葉も丁寧で、悪気はまったくない。でも、至近距離でお話しするうちに、強い口臭が気になり……。
その瞬間、どれだけ丁寧な言葉も頭に入ってこなくなりました。
その方には何か事情があったのかもしれませんし、決して責めていません。 しかし世界基準のホスピタリティにおいて、清潔感は「気遣い」ではなく、最低限の信頼条件です。
頻繁にプライベートジェットに乗るようなお客様は、驚くほどケアを徹底されています。 ぴかぴかの髪、つやつやの肌、さわやかな口元、整えられた指先。
そういったお客様をお迎えするとき、同じように高いスタンダードで自分を整えていなければ、ひと目で「プロではない」という印象を与えてしまいます。
決して、華やかさや派手さは必要ありません。 シンプルに整えられた爪、清潔な口元、落ち着いた所作など。それだけで、「この人はプロだ」という信頼が十分伝わります!
具体例③英単語の選び方
「英語には日本語のような敬語がないから、どう話しても同じ」と思っていませんか?
実はこれ、大きな誤解なんです! 使う単語ひとつで、その場の格が変わります。
たとえば、高級ホテルのスタッフが「OK」と答えた瞬間、海外のお客様は少し違和感を覚えます。 その場でお客様が怒ることはないかもしれませんが、ホテル全体のイメージが下がっている可能性も。
他にもよく混同しがちな英語
OK → Certainly(かしこまりました) You're welcome → It's my pleasure(光栄でございます)
Can you...? → Would you mind...?(〜していただけますでしょうか)
これは単なるスキルの問題ではありません。
現場のひとり一人が「自分たちはどのようなブランドであるか」という姿勢を持ち、お客様に対しての発言に現れているか。
ホスピタリティと接遇英語を同時にできる人材は、実はまだ少ないのが現状です。 だからこそ、この両方を身につけることは、現場スタッフやブランド全体にとって大きな差別化になります。
ハイコンテクスト文化という背景
では、なぜこうしたズレが生まれるのでしょうか。
日本は「ハイコンテクスト文化」と呼ばれる社会です。 言葉にしなくても伝わる、言わなくても察してもらえるという前提でコミュニケーションが成立しています。
これは非常に高度な文化と能力ですが、グローバルの舞台では通じません。
「言わなくても分かるはず」という感覚が、選択肢を奪うサービスを生む。
「言わなくても整っているはず」という暗黙の了解が、清潔感への油断を生む。
「なんとなく丁寧に」が、英単語への無頓着を生む。
国を超えた文化の違いは些細にみえますが、ビジネスの現場では大きな誤解を生んでしまいます。
解決の方向性は、否定せずに足すこと
では、どうすればいいのか。
日本のおもてなしを変える必要はなく、むしろ大切に守っていくべきものです。
たった3つだけ足しましょう。
選択肢:お客様に「決める自由」を渡す
清潔感の基準:世界のプロと同じ土俵に立つ
言語化:ブランドの姿勢を言葉で伝える
この3つを日本のおもてなしの上に足すだけで、あなたのサービスはグローバルなお客様の心に、本当の意味で届くものになります。
意識が変わると、現場は変わる
効率や正確さだけであれば、AIの方が得意なことはたくさんあります。
でも、相手の背景を汲み取り、対等なプロとして提案し、心を通わせることは人間にしかできないと思っています。
現場の一人ひとりが「世界基準」の視点を持つだけで、組織全体がさらに飛躍していきます。
「うちのスタッフにこの視点を持たせたい」「グローバル対応の研修を検討したい」そんな方は、ぜひお気軽にご相談ください!


