一泊10万円のホテルでの「惜しい」経験。そこから日本の未来を考えてみた
- 5月1日
- 読了時間: 5分
更新日:4 日前

みなさん、こんにちは!株式会社グランジュテ・インスティテュートの今泉麻衣子です。
プライベートジェットCAとして世界中を飛び回りながら、ホスピタリティについての研修や講演をおこなっています。
仕事柄、世界各国のホテルに泊まる機会が多い私(趣味でもあります)。 滞在を楽しみながら、いつもホスピタリティの勉強をしています。
先日、とある日本の高級ホテルに泊まったのですが、「惜しい」と思う出来事がありました。
その「惜しい」を掘り下げていくと、単なる接客の話ではなく、マインドセット、人材育成、そして日本の未来に対する危機につながっていきました。
今日は、そのホテルでの出来事からお話しさせてください。
一泊10万円のホテルで消臭スプレーを頼んだ夜

先日、都内のあるホテルに宿泊しました。 歴史があり、内装も景色も素晴らしい、一泊10万円ほどの高級ホテルです。 何日も前から楽しみにしていました。
いざチェックインして入室すると、少し気になる匂いがしました。 加齢臭というか、古い布の匂いというか……
すぐにフロントへ電話して、消臭スプレーをお願いしました。
しばらくして、スタッフが持ってきてくれました。そして「どうぞ」と渡して、去っていきました。 それだけ。
電話口のフロントスタッフも、届けに来てくれたスタッフも、なぜ消臭スプレーが必要なのかを聞いてはくれませんでした。
気づき力があれば、次の提案ができる

私はこの出来事にモヤモヤしました。 一泊10万円の高級ホテルなのに、「対応が惜しい」と思ったのです。
では、どうすればよかったのか。 自分がそのスタッフだったら、と考えてみました。
チェックインしたばかりのお客様から消臭スプレーのリクエストがあったとき、そこには2つの可能性があります。
可能性①:お部屋が臭う場合 部屋の移動を提案できます。 消臭スプレー以外にホテルができる対応を伝えることも考えられます。
可能性②:持参した衣類のケアをしたい場合 館内でのクリーニングを案内できます。 アイロンとアイロン台の用意を提案することもできますね。

どちらの場合も、スタッフが一言「お部屋で何か気になることがございましたか?」と聞くだけで、お客様に合った提案ができます。
消臭スプレーを届けてくれたこと自体は、もちろんありがたかったです。
でも、なぜ必要なのかを想像して、お客様に一歩踏み込むこと。 それがホスピタリティであり、「気づき力」だと思っています。
気づきは想像することから始まる

私は最近、講演で「気づき力」についてお話しする機会が増えました。 では、気づき力とはどんなものでしょうか。
言われたことをやるだけなら、ロボットでもできます。むしろ得意です。 実際、海外のホテルでは備品をロボットが届ける光景もよく見ます。
そうではなく、人間にしかできないのは、「相手がなぜそれを求めているのかを想像すること」だと思っています。
そのお客様が今日ここに来るまで、何があったのか。 ホテルを出た後、どこへ向かうのか。 その前後を想像して、今できることを考える。これが気づき力の本質です。
気づき力は、特別な才能ではありません。 相手に関心を持つこと、想像すること、そして一歩踏み込む勇気を持つことから始まるのです。
それがなぜできないのか

とはいえ「頭で分かっていても、実際にはできないよ」という方もいらっしゃるかもしれません。
できない理由は、大きく3つあると思います。
一つは、研修の問題です。 多くのホテルや企業では、お辞儀の角度や言葉遣い、マニュアル通りの対応を教えます。 でも「なぜそうするのか」「お客様は何を求めているのか」という根っこの部分は教えることは少ないです。 テクニックだけでは、お客様の心は動きません。
もう一つは、人材と給与の問題です。
優秀な人材は、より良い待遇を求めて外資系ホテルや海外へ流れていきます。
例えば、日本の高級ホテルが初任給18万円、外資系ホテルが20万円であれば、優秀な人材は後者を選びます。 良い人材が育たないのではなく、良い人材が来ない構造になっているのです。
最後は、教育の問題です。 日本の教育は長らく「言われた通りにやる」「正解を覚える」ことを重視してきました。 「あなたはどう思いますか?」と問われる機会は、多くなかったのではないでしょうか。 受け身で正解を待つ人が増えると、気づき力は生まれにくく、イノベーションも起きなくなりますよね。
これは、個々のスタッフの問題ではありません。育て方と、報い方、社会の仕組みの問題です。
このまま放置すると、日本の将来が危ない

優秀な人材が海外や外資系に流れ続けると、日本のサービスの質は下がっていきます。 それはやがて、日本という国のブランドにも影響します。
インバウンドが増え、世界中から旅行者が訪れる今、「おもてなし」への期待値は高まっています。 でも現場がその期待に応えられなければ、「日本のサービスは惜しい」「期待外れ」という印象に変わってしまいます。
ただ、この状況は変えられます。 気づき力を持つ人が増えるたびに、現場は変わるのです。
次回は、気づき力をさらに掘り下げて、時代的な構造や背景をお話しします。