なぜ仕事量が10倍なのか。プライベートジェットCAの仕事のリアル

みなさん、こんにちは! 株式会社グランジュテ・インスティテュートの今泉麻衣子です。
前回は、エアラインとプライベートジェットの違いをお話しました。
今回は、そのなかで働くCAの仕事に踏み込んでいきます。
「プライベートジェットのCAって、エアラインのCAと何が違うんですか?」
これもよく聞かれる質問です。 結論から言うと…
仕事量は、10倍くらい違います。
「そんなに?」と思われるかもしれません。 でも、これは誇張でも謙遜でもないんです。
なぜ10倍なのか、順を追ってお伝えします。
エアラインCAとの決定的な違い

エアライン(航空会社)では、機内を支えるための仕事が細かく分業されています。
たとえば、
食事はケータリング会社が準備して搭載。
機内清掃は専門のスタッフが行う。
備品の補充は、地上スタッフが対応。
CAはそれらを受け取って確認。お客様にサービスを提供することに集中します。
しかしプライベートジェットには、その仕組みがありません。
なので、機内に必要なものは、すべてCAが用意します。
食材の手配も、備品の補充も、清掃も、ベッドメイクも……機内で起きることのすべてが、プライベートジェットCAの仕事です。

チームで動くエアラインとは違い、たった一人で用意するのです。 (稀ですが二人の場合も!)
<POINT> エアラインCA:分業制なので自分の役割に集中できる。 プライベートジェットCA:機内のすべてを一人でプロデュースする。
フライト前の準備

フライトの準備は、離陸のずっと前から始まります。
まず、お食事の手配。 お客様の好みや宗教上の制限、アレルギー情報などをもとに、ゼロからメニューを考えます。
エアラインのように「今月のお食事はこれです」という決まりがないので、毎回そのお客様のためだけのメニューです。

メニューが決まれば、お客様とシェフそれぞれと入念に打ち合わせ。 フライトぎりぎりまで調整が終わらないことも多々あります。
また、同時並行で、フライトに必要なものを準備していきます。
お客様によって異なりますが、たとえば、
・紅茶の茶葉や添えるレモン ・アイスクリームを保存するためのドライアイス ・料理に必要な調味料 ・机に飾るお花のアレンジ ・お客様の好みに合わせた雑誌や新聞 ・アメニティやスリッパの選定 ・トイレットペーパー

正直、キリがありません…!
これらすべてを、自ら購入・手配・搭載します。 「機内にあるものは、すべて用意する」のがプライベートジェットCAの仕事といえるでしょう。
そしてスケジュールですが、フライトが数ヶ月前に決まることもあれば、数日前にいきなり連絡が来る場合もあります。 しかし、そんな時でも準備の質は決して変えません。
限られた時間のなかで、何ができるかを瞬時に判断して動く力が求められます。
フライトがはじまってから終わるまで

エアラインのCAと同じように、離陸してからも仕事は続きます。
しかし違うのは、業務の幅広さ。
お食事の提供はもちろん、保安業務、急病人への対応、アイロンがけや洗濯まで。 機内で起きることへの対応は、すべてプライベートジェットCAの仕事です。
そして、食事が終わったら…
お皿を洗います。

「え、お皿まで洗うんですか?」とよく驚かれます。
実は、エアラインでは使用済みの食器はまとめて下ろすだけですが、プライベートジェットではそうもいきません。
着陸までに時間があれば、食器を洗って乾かして、きちんとしまう。 機内のキッチン(ギャレー)を、自分の家のように整えておく感覚です。
そして、清掃も同じです。
掃除機がけ
シートの拭き上げ
トイレ掃除
ゴミの処理
ベッドリネンの交換とクリーニング手配

これらをフライトの前後におこないます。 コロナ禍には消毒作業も加わったので、少し大変でした。(安全のために必要ですが)
さらに!パイロットのケアも忘れてはいけません。
長時間フライトで眠くなりやすい時間帯にはコーヒーを届け、食事のタイミングも気を配ります。 お客様の次に、パイロットへ。 自分のことは、いつも最後になります

以前、あるフライトで14名のお客様を一人で担当したことがあります。
9時間半のフライトで、お食事を2回提供して、その都度片付けて、洗って。
気づけば、ほとんど座っていませんでした。そんなこともあります。
<POINT> フライトの仕事:食材手配・メニュー設計・搭載・提供・片付け・皿洗い・ベッドメイク・清掃・トイレ掃除・ゴミ処理・パイロットケア…… これらを、ほぼ一人でおこなう
それでも仕事が大好き

ここまで読んで、「大変すぎる……」と思った方もいるかもしれません。
でも正直に言うと、私はこの仕事が好きでたまりません。
「限られた時間のなかで、どうやってお客様に最高の笑顔をお届けするか?」
この正解のない問いに、毎回向き合っています。 それが仕事の終わりのなさであり、やめられない理由でもあります。
ちなみに、去年1年間で、58本のフライトに乗りました。 長いものは15時間を超えます。
それでも飽きたことは、一度もありません。 なぜなら、毎回違うお客様・違う場所・違うドラマがあるから。

次回は、そんな仕事のなかでも特に驚かれるエピソードをお届けします。
世界の市場でCAが食材を買う話。 フルーツはケータリングで頼まず、自分で市場に行って選んで切る、という話です。
(私と同じように)食いしん坊の方、お楽しみに!


